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NFL 2021 がんばれ!ライオンズ One more baby!

勝とうが負けようが、このゲームでシーズン終了が確定しているデトロイト・ライオンズ。
対戦相手は、やはり勝とうが負けようがプレイオフの第1シードが確定しているグリーンベイ・パッカーズ。
同じディビジョンで長い間ふん反りかえる相手に立ち向かったライオンズの合言葉は、One more baby!だった。

モータウンらしい国歌斉唱

デトロイトのフォード・フィールドで行われたゲームでは、モータウンらしい国歌斉唱が行われた。
もっとも歌ったのはサクソフォンで、演奏されていたのもサクソフォンだけ。
つまりサクソフォン一本の演奏だけで行われたそれは、とても味わい深いものだった。
あの国家特有の高まりを表現しながら、シーズンが終わるという寂寥感も含んだ奥行きと深さ。
当日、スタジアムでこれを耳にした観客たちには幸福な時間となったことだろう。
そして、ファイトしながらも、もう一歩及ばなかったゲームが続いたライオンズの面々には、どんな感情が湧き起こっていただろうか…

One more baby!

レギュラーシーズン最後の第18週を迎えるライオンズの戦績は、2勝1分け、そして13敗だ。
プレイオフに一切の影響をもたらさないこのゲーム。
彼らが勝ったとしても2勝が3勝になるだけ。
たとえ負けたとしても、13敗が14敗になるだけ。
数字としての大きな違いはそこにない。
しかし、1勝は1勝なのだ。
ひとつの勝利の重みを知る彼らは、ただこのゲームに勝つことだけに集中した。
合言葉は、One more baby!

リスクをとって果敢に戦う彼らのスタイルは、このゲームでも健在。
看板のフェイクパントは失敗したが、プレイブックをめくりにめくって繰り出されたスペシャルプレイは、いずれもホームランTDとなった。

WR トム・ケネディの75ヤードパス

デトロイト・スペシャルとでも呼ぶべきなのか、クイックで矢継ぎ早なフリーフリッカーから投じられたパスは、75ヤードのホームランTD!
あまりの完璧な決まりっぷりに、サイドラインの選手たちは、毎試合やろうぜ!なんて騒いでる。

その完璧なパスを投じたトム・ケネディはWR。
そのパスはWRが投じたものとしては、NFL史上2番目に長いものとなった。

Boilermaker

2つ目のホームランTDとなったスペシャルプレイは、Boilermakerとコールされている。

1本目とは異なるフリーフリッカー。
そのオリジナルは、控えQB デビッド・ブロウによるものだ。
彼がカレッジ時代に、少なくとも5回以上使って全て成功するという、脅威の成功率を誇るスペシャルプレイだったらしい。

オーソドックスなランプレイでフィニッシュ

この日、再逆転し、とどめを刺したTDはオーソドックスなランプレイだった。
今シーズン、攻撃力が向上しないことにライオンズは苦しんでいた。
このゲームの翌日、OC アンソニー・リンは職を解かれチームを離れることになった。
デトロイト・スペシャルに頼らざるを得なかったのは、ノーマルなプレイでの得点力を望めなかったからということなのだろう。
しかし、こうしてシーズン最後の、しかも逆転のフィニッシュTDを、オーソドックスなランプレイであげられたことは、ひとつの希望だ。
そして、希望は、これだけではない。

新たなる希望 WR アモン-ラ・セント・ブラウン

この日もしっかりとTDを決めたルーキーWR アモン-ラ・セント・ブラウン。
大活躍の彼は、第18週のRookie of the Weekを獲得した。

そうしてなんと、殿堂入りした大先輩、カルビン・ジョンソンのルーキーレコードも塗り替えてしまった。

NFL全体でもルーキー史上3番目となる記録を樹立。

思えば、彼がNFLで最初に記録したTDは、第13週に今シーズン初めてライオンズが勝利をあげたゲームで記録されたものだ。
試合終了と同時にあげた劇的な逆転TD。
それは、これから、より輝かしいドラマを生むであろう彼のキャリアのほんの序章にすぎないのかもしれない。

NFC Defensive Player of the Weekに輝いたトレイシー・ウォーカー3世

ディフェンスもこの日は素晴らしかった。
要所で見せるQBサックとターンオーバーで、最後までパッカーズにイージーなドライブを許さなかった。

その中から、ゲームにピリオドを打つインターセプトを決めた、S トレイシー・ウォーカー3世がNFC Defensive Player of the Weekに選出された。

ライオンズのSが選出されるのは2014年以来のこと。
オフェンス、ディフェンス、スペシャルチーム全てで同じシーズンに受賞者が出たのは2011年以来のことだ。

いや、パッカーズは、後半にはスターターQBを引っ込めてしまったじゃないかと言われるかもしれない。
確かにキリストよりヘイルメリーパスの成功率が高く、キリストより髭の長いQBがいれば状況は変わったかもしれない。
しかし、現実には彼はスナップを受けなかったし、来年は違うジャージを着ているかもしれない。
来シーズン、戦うのは#10である可能性が高いのだ。
現実にライオンズは勝って見せた。
長年同じディヴィジョンで苦汁を飲まされ続けてきた相手に。
1勝は1勝。
しかし、相手が缶詰野郎となれば、それは大きな大きな1勝なのだ。

ライオンズを応援するなんて…

NFLを観るのなら、スポーツを観るのなら、やはり応援チームを決めてシーズンを追いかけるのが、一番のめり込めるはずだ。
では、どのチームを応援するのか?
強ければいいってもんじゃない。
弱ければいいってもんじゃない。
Niceであることは必要ではないけれど、Evilには付き合いきれない。
何かの拍子に出会った相手を知っていくほどに好きになる。
そんな、恋愛と同じメカニズムが働くのかもしれない。

今シーズン、ふと見かけた戦いぶりに、僕はいつの間にか彼らのシーズンを気にかけてしまった。
そうして迎えた初勝利の瞬間の、スタジアムを包んだあたたかさはインプレッシブだった。
そしてこうしてチームのことを知るようになると、来シーズン以降の楽しみも感じられる…

いや、だめだ。
冷静になろう。
確かにバリー・サンダースが僕の中では、最高のRBだったと思っている。
しかし、それはそれ、これはこれだ。
一時の感情に流されて、ライオンズなんか応援しだしたら不幸になるに決まっている。
稼ぎの悪い男と所帯を持った女のように、毎日をヤキモキしながら過ごさなければならないのは目に見えている。

そもそも、ユニフォームを一度もかっこいと思ったことのないチームに心惹かれるなんて、これまで一度もなかったじゃないか。
OK、わかった。
2022年シーズンには、彼らはユニフォームの大幅な変更の権利を行使できるようになる。
話は、それを見てからにしようじゃないか…

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