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『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』観た人のためのレビュー

Amazonプライムビデオで配信されている『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』を観始めたが最後、結局、8話まで一気に駆け抜けてしまった。
どーのこーのは置いといて、原子力潜水艦同士の海中での臨場感あふれる戦闘シーンに釘付けになってしまう。
観終わった僕のアタマには、ふたつの現在(いま)が浮かんでる。

現在(いま)の制作技術

臨場感あふれる戦闘シーンを可能にしているのは、現在の技術。
防衛省の協力により撮影できた実際の潜水艦の映像と溶け合うように作成されたCGが、迫力のある映像を生んでいる。
潜水艦同士の戦闘なんて、相手は目視できない上に、弾薬を派手にばら撒くようなものではない。
薄暗い海中の中で、音紋を頼りに特定した相手に効果的に数発の魚雷を放つ。
そんな地味なシーンを、静かな緊張感と高い臨場感で描くことを可能にしているのは、現在の技術のなせる技。

余談ながら、潜水艦の操艦には、どんなセンスが必要なのだろう。
海底の地形を頭に叩き込み、堆積物さえ利用する海江田四郎の存在はフィクションだとしても、角度と方向、そしてタイミングを自らが操舵することなく、指示命令することで操っていく。
車両感覚のような、船体の感覚も持ち合わせているのだろうか。
目視できないまま、三次元の方向に、さらに速度という要素を加えて操艦するという感覚は、僕には想像すら叶わない。

話を戻そう。
現在の技術を支えているのは、現在(いま)の金。
そう、Amazonというデッカい財布が、それを支えている。

『沈黙の艦隊』実写化プロジェクトは、日本のAmazonスタジオが過去最大級の予算を投じて、世界に誇る日本発のドラマシリーズを作るべくスタートしたものでした。

Amazon Newsroom – Amazon Originalドラマ 『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』 2024年2月9日(金)よりPrime Videoで世界独占配信決定!

日本人だけで作り上げるコンテンツに海外の莫大な予算が注ぎ込まれるなんて、ひとむかし前では考えられなかった。
配信という仕組みは、アグラをかいてる既得権益者に見切りをつけて、ボーダーレスにお金を流動化させるという働きもあるようだ。
それを支えているインターネットというものは、確かにセカイを変えているのかもしれないね。
原作がこんなカタチで実写化されるなんて、インターネットもなかったあの頃には、想像できるわけもないか…

現在(いま)のセカイ

なぜ、今、これが実写化されることになったのかは、僕にはわからない。
それは、製作陣のたまたまのタイミングだったのかもしれない。
しかし、セカイは、現在(いま)は、日本独自の防衛力にスポットライトが当たっている。

原作が生まれた当時、まだソ連が健在だった。
だいぶソ連が衰弱していたとはいえ、それでも世界は東西ふたつのカンファレンスで安定して運営されており、世界を滅亡に導くプレイオフは行われそうになかった。
だが、現在の世界は、カンファレンス制をやめてしまった。

身軽になったロシアはカジュアルに戦争を始め、世界の下請工場として成り上がった中南海は、野心と表現するのも相応しくないようなギラギラした臭いを放っている。
暴走化しようとするインディペンデントたちは、ありがたいことに海を挟んだ隣国の皆様だ。
アメリカの核の傘に守られているから9条にしがみついておけば安全なんだよと言われていたニッポンも、その傘は本当に開いているのかと疑心暗鬼になっている。
なぜなら、世界の警察官という重たいボランティアから、アメリカは、とうの昔に足を洗っているようなのだ…

以前の安定していた世界なら、このお話も、身内のいざこざレベル。
殺し合いには発展しないだろうから喧嘩もできるというものだ。
だが、現在の世界で、これが起きれば大事だ。
すなわち、アメリカの第三艦隊と第七艦隊が引っ掻き回され、しかも空母を失うなんて事態になれば、台湾、沖縄あたりの情勢はどうなることだろうか。
海江田四郎は、それを見越しても、同じ振る舞いをするのだろうか…

当時と変化しているものは、もうひとつある。
それは、国連に抱いていた幻想が完全に崩れ去ったことだ。
連合国軍の会議で始まったそれは、連合国のひとつも制御できないことが明るみになった。
人権委員会と名乗る組織がありながら、ウイグルの職業訓練センターと称する施設は放置されている。
国連とはそのようなものだと知っていても、海江田四郎は国連指揮下に入ることに同意するだろうか…

原子力とディーゼルと

劇中では、原子力潜水艦とディーゼルエンジンの通常動力潜水艦の対比も描かれる。
充電の必要のない原子力潜水艦である「やまと」は、潜航し続けることができる。
対して、通常動力潜水艦である「たつなみ」は、浮上して充電する必要があり、その度に追跡を中断しなければならない。
現実の最新鋭艦には、リチウムイオン電池の採用で大幅に性能を向上させたものが登場している。

2022年に就役した最新鋭の『たいげい』は、既存艦からどう進化したのだろうか。柿谷氏は「全体的に見ると、静粛性が向上し、船体が大型化しています」と解説する。詳しく見ていこう。

新型潜水艦『たいげい』、これまでの潜水艦と何が違う?専門家が解説 – MAMOR-WEB

原子力潜水艦自体は永遠に潜っていられるが、乗組員は、そういうわけにもいかないとは言われる。
であれば、リチウムイオン電池の採用等で性能を向上させていく通常動力潜水艦で充分なのか、それともやっぱり、いざとなれば原子力潜水艦でなければ作戦行動に差が出るのか。
このあたりは、情弱な僕には全く分かりようもないけれど…

田中要次 演じる沼田司令

キャストは誰も素晴らしく、臨場感のある戦闘シーンに負けず劣らずのドラマを味合わせてくれた。
意外だったのは、第2護衛隊群司令である沼田徳治を演じた田中要次。
この人が艦隊司令をやるのかと思ったが、とても良い味を出していた。
鷹揚として、非常事態に張り詰めていく部下を受け止めながら的確な指示を出す。
この作品のマイフェイバリットを一人あげろというのなら、彼だろう。

Anyway、続編の制作も決定されたようだし、海江田四郎の行き先を最後まで見届けることにしようじゃないか。

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