ゲームは、シンシナティ・ベンガルズのプラン通りに進んでいるように見えた。
しかし、最後の最後にゲームを決めたのは、やっぱりロサンゼルス・ラムズのパスラッシュだった。
彼らは、2.5秒という時間のバリアをジョー・バロウから奪ってしまった。
2.5秒の境界線
ラムズの看板パスラッシャーにプレッシャーをかけられるのは、織り込み済みの前提条件だ。
しかし、2.5秒だけ辛抱できれば、状況はオセロのようにひっくり返る。
When quarterbacks held for longer than 2.5 seconds this season, the Rams generated a top three pressure rate (2nd) and sack rate (3rd).
Joe Burrow on the other hand, was more boom-or-bust:
🔸 10.3 yards/attempt (best among QB)
🔸 16.0% sack rate (2nd-worst)#SBLVI | #RamsHouse pic.twitter.com/l00dsncomR— Next Gen Stats (@NextGenStats) February 9, 2022
そうしてジョー・バロウは、この約束事を守り続け、前半は、なんと2.35秒の早技でリリース!
First Half Passing Charts 🎯
Matthew Stafford has been pressured on just 10.5% of dropbacks despite a season-high 3.25 seconds time to throw.
Joe Burrow has been pressured on 36.8% of dropbacks despite a career-low 2.35 seconds time to throw.#RamsHouse | #RuleTheJungle pic.twitter.com/ATkwGgdWmz
— Next Gen Stats (@NextGenStats) February 14, 2022
2.5秒以内に投じられたパスにラムズは、あまり強くない。
しかもフィールドの外側のゾーンでは…
それを象徴するように、ラムズのエースCB ジャレン・ラムジーは2度もぶち抜かれてしまった。
Joe Burrow & Ja’Marr Chase (46-yd pass)
Completion Probability: 27.1%🔸 Pass Rush Separation: 2.2 yards
🔸 Air Distance: 54.3 yards
🔸 Target Separation: 1.3 yards» Jalen Ramsey has aligned against Chase on 5 of 9 routes (56%), 1 rec on 2 targets#SBLVI | #RuleTheJungle pic.twitter.com/jYxQQ5iIlx
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パスの飛距離54.3ヤードは、ジャマール・チェイスの今シーズンの中では最長だ。
Joe Burrow finds Tee Higgins for a 75-yard TD on the first play of the second half, using play action for the first time all game.
Jalen Ramsey was the nearest defender on the play, the longest reception he has allowed in his career.#SBLVI | Powered by @awscloud pic.twitter.com/wAWFYVYpFm
— Next Gen Stats (@NextGenStats) February 14, 2022
さらには、75ヤードというジャレン・ラムジーのキャリアの中で最も長いパスを通されるという屈辱まで味合わされた。
Joe Burrow was the only quarterback in 2021 to throw double-digit touchdowns on deep passes (11).
Ja’Marr Chase was the targeted receiver on 7 of Burrow’s 11 deep TD passes, the 2nd-most of any QB-WR duo in a season since 2019.#StatThat | #RuleTheJungle pic.twitter.com/htgaG3wGXB
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しかし、今シーズン誰よりもサックを受けながら、誰よりもロングパスによるTDを上げたジョー・バロウが相手なら、TDが一本で済んだのは幸運だったと言えるだろう。
ペースを掴んでいたのはベンガルズ
あっさり先制は許したものの、最後の最後までベンガルズがペースをを握っていた。
いつもは後半型のジョー・ミクソンは、前半から好ゲインを見せ、ラムズのS ニック・スコットの反応の良さを逆手にとってスイープパスまで決めてしまった。
🚨 Trick Play TD 🚨
Joe Mixon receives the toss, bringing the Rams safeties down and allowing Tee Higgins to get behind the defense.
Tee Higgins Target Separation
🔸 Pass Forward: 5.1 yards
🔸 Pass Arrival: 1.7 yards#SBLVI | #RuleTheJungle pic.twitter.com/ogzOUzOZhg— Next Gen Stats (@NextGenStats) February 14, 2022
ラムズがサックを増産できたのは?
しかし、後半に入ると、ジョー・ミクソンのランはファーストダウンを更新できなくなっていった。
残されたショートヤードも、力づくでもぎ取ることはできなかった。
そうして、後半、ジョー・バロウは5サックを受けることになる。
では、ラムズのパスラッシュが著しいスピードアップをしたのか?
RK | PLAYER | TEAM | POS | TIME (SECS) |
1 | Ernest Jones | LAR | ILB | 3.47 |
2 | Von Miller | LAR | OLB | 3.97 |
3 | D.J. Reader | CIN | NT | 4.22 |
4 | Trey Hendrickson | CIN | DE | 4.23 |
5 | Aaron Donald | LAR | DT | 4.47 |
6 | Leonard Floyd | LAR | OLB | 4.5 |
7 | Von Miller | LAR | OLB | 4.53 |
8 | A’Shawn Robinson | LAR | DT | 4.67 |
9 | Aaron Donald | LAR | DT | 5.57 |
Next Gen Statsを見る限り、そうとは思えない。
ゲームを見返してみると、ジョー・バロウがサックされる場面は、ファーストターゲットに投げるのをやめた直後だ。
カバーされていることを確認し、次のアクションに移る場面でやられている。
後半になってパスカバーをアジャストしたラムズが、パスラッシュが届く時間を生み出していたということなのだろうか。
View the Next Gen Stats Joe Burrow
情報源: Joe Burrow | NFL Next Gen Stats
クーパー・カップ、クーパー・カップ…
止めを刺すことができなかったベンガルズは、逆にとどめを刺されることになった。
ラムズ生え抜きの攻守のエースがゲームを決めて見せたのだ。
Cooper Kupp gained more first downs as a result of a reception, rush, or penalty on the Rams’ last drive (5) as he did over their first 11 drives of the game (4).#SBLVI | #RamsHouse pic.twitter.com/FnkoqtQWzG
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OBJの負傷で状況がどんどん厳しくなる中で、結果としてのTDをもぎ取った。
厳しくなればなるほど、マシュー・スタッフォードが彼を頼りにする傾向がありありと出ている中で。
After Odell Beckham left the game in the 2nd-quarter, Matthew Stafford struggled to find open receivers.
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Stafford Tight Window Rate (< 1 yd of separation)
🔹 Beckham On-Field: 8.3%
🔹 Beckham Off-Field: 28.6%
🔹 Full Game: 22.5% (season-high)#SBLVI | #RamsHouse pic.twitter.com/0a2GF1xUee
ジャマール・チェイスも出来は悪くなかった。
しかし、必ず達成するだろうと言われていた、これまでわずか4人のルーキーWRだけが達成したことのあるスーパーボウルでのレシービング100ヤードは達成できなかった。
もちろん簡単なことではないし、そうさせなかったラムズのカバーもあるだろうが、彼ほどの選手であるならば、この大舞台でこそYACの怪物ぶりを発揮して欲しかった。
後半の膠着状態の中でそれが飛び出していれば、十分にとどめになったはずだ。
View the Next Gen Stats Ja’Marr Chase
情報源: Ja’Marr Chase | NFL Next Gen Stats
アーロン・ドナルドの2.2秒
最後の最後、ゲームを決定づけたアーロン・ドナルドのパスラッシュは、わずか2.2秒!
ファーストターゲットも何も、いかに辛抱を続けていたジョー・バロウにしても、あまりにも時間の猶予がなさすぎた。
ラムズのHC ショーン・マクベイのThis is the moment!という檄の直後のこのスーパープレイは、ハリウッドの脚本のように出来過ぎだった。
Aaron Donald generated a team-high 7 pressures and 2 sacks on 40 pass rushes (17.5% pressure rate).
— Next Gen Stats (@NextGenStats) February 14, 2022
Rams Defense (Super Bowl LVI)
🔹 41.5% pressure rate (season-high)
🔹 17.1% sack rate (season-high)#SBLVI | #RamsHouse pic.twitter.com/i22QiZTuzR
結果的にこの日のラムズのディフェンスフロントは、シーズン最高の出来だった。
この日の、この勝利のためだけにALL IN!してきたラムズは、見事に賭けに勝ったのだ。
そしてアーロン・ドナルドは、NFL最優秀守備選手賞を複数回受賞した選手が出場するチームはスーパーボウルでは負けないというジンクスを守った4人目の男となった。
クーパー・カップのMVPに異論はないが、彼がMVPでも良かったとも思う。
NFL WAY TO PLAYを受賞してはいるけれど。
AWSの機械学習は、彼の最後のプレイに最も反応している。
残り時間何秒などという生やさしいものじゃない。
コンマ数秒が勝負の分かれ目となったこのゲームは、A Game of Comma Secondsと呼ぶべきものだ。
気づけば、LAという街にロンバルディトロフィーがもたらされたのは38年ぶりということになる…
ザ・ロックの、うやうやしい前口上は、決してやりすぎなんかではなかったのだ。
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