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2022 第56回スーパーボウル A Game of Comma Seconds

ゲームは、シンシナティ・ベンガルズのプラン通りに進んでいるように見えた。
しかし、最後の最後にゲームを決めたのは、やっぱりロサンゼルス・ラムズのパスラッシュだった。
彼らは、2.5秒という時間のバリアをジョー・バロウから奪ってしまった。

2.5秒の境界線

ラムズの看板パスラッシャーにプレッシャーをかけられるのは、織り込み済みの前提条件だ。
しかし、2.5秒だけ辛抱できれば、状況はオセロのようにひっくり返る。

そうしてジョー・バロウは、この約束事を守り続け、前半は、なんと2.35秒の早技でリリース!

2.5秒以内に投じられたパスにラムズは、あまり強くない。
しかもフィールドの外側のゾーンでは…
それを象徴するように、ラムズのエースCB ジャレン・ラムジーは2度もぶち抜かれてしまった。

パスの飛距離54.3ヤードは、ジャマール・チェイスの今シーズンの中では最長だ。

さらには、75ヤードというジャレン・ラムジーのキャリアの中で最も長いパスを通されるという屈辱まで味合わされた。

しかし、今シーズン誰よりもサックを受けながら、誰よりもロングパスによるTDを上げたジョー・バロウが相手なら、TDが一本で済んだのは幸運だったと言えるだろう。

ペースを掴んでいたのはベンガルズ

あっさり先制は許したものの、最後の最後までベンガルズがペースをを握っていた。
いつもは後半型のジョー・ミクソンは、前半から好ゲインを見せ、ラムズのS ニック・スコットの反応の良さを逆手にとってスイープパスまで決めてしまった。

ラムズがサックを増産できたのは?

しかし、後半に入ると、ジョー・ミクソンのランはファーストダウンを更新できなくなっていった。
残されたショートヤードも、力づくでもぎ取ることはできなかった。
そうして、後半、ジョー・バロウは5サックを受けることになる。

では、ラムズのパスラッシュが著しいスピードアップをしたのか?

RK PLAYER TEAM POS TIME (SECS)
1 Ernest Jones LAR ILB 3.47
2 Von Miller LAR OLB 3.97
3 D.J. Reader CIN NT 4.22
4 Trey Hendrickson CIN DE 4.23
5 Aaron Donald LAR DT 4.47
6 Leonard Floyd LAR OLB 4.5
7 Von Miller LAR OLB 4.53
8 A’Shawn Robinson LAR DT 4.67
9 Aaron Donald LAR DT 5.57

Next Gen Statsを見る限り、そうとは思えない。
ゲームを見返してみると、ジョー・バロウがサックされる場面は、ファーストターゲットに投げるのをやめた直後だ。
カバーされていることを確認し、次のアクションに移る場面でやられている。
後半になってパスカバーをアジャストしたラムズが、パスラッシュが届く時間を生み出していたということなのだろうか。

View the Next Gen Stats Joe Burrow

情報源: Joe Burrow | NFL Next Gen Stats

クーパー・カップ、クーパー・カップ…

止めを刺すことができなかったベンガルズは、逆にとどめを刺されることになった。

ラムズ生え抜きの攻守のエースがゲームを決めて見せたのだ。

OBJの負傷で状況がどんどん厳しくなる中で、結果としてのTDをもぎ取った。
厳しくなればなるほど、マシュー・スタッフォードが彼を頼りにする傾向がありありと出ている中で。

ジャマール・チェイスも出来は悪くなかった。
しかし、必ず達成するだろうと言われていた、これまでわずか4人のルーキーWRだけが達成したことのあるスーパーボウルでのレシービング100ヤードは達成できなかった。
もちろん簡単なことではないし、そうさせなかったラムズのカバーもあるだろうが、彼ほどの選手であるならば、この大舞台でこそYACの怪物ぶりを発揮して欲しかった。
後半の膠着状態の中でそれが飛び出していれば、十分にとどめになったはずだ。

View the Next Gen Stats Ja’Marr Chase

情報源: Ja’Marr Chase | NFL Next Gen Stats

アーロン・ドナルドの2.2秒

最後の最後、ゲームを決定づけたアーロン・ドナルドのパスラッシュは、わずか2.2秒!
ファーストターゲットも何も、いかに辛抱を続けていたジョー・バロウにしても、あまりにも時間の猶予がなさすぎた。

ラムズのHC ショーン・マクベイのThis is the moment!という檄の直後のこのスーパープレイは、ハリウッドの脚本のように出来過ぎだった。

結果的にこの日のラムズのディフェンスフロントは、シーズン最高の出来だった。
この日の、この勝利のためだけにALL IN!してきたラムズは、見事に賭けに勝ったのだ。

そしてアーロン・ドナルドは、NFL最優秀守備選手賞を複数回受賞した選手が出場するチームはスーパーボウルでは負けないというジンクスを守った4人目の男となった。
クーパー・カップのMVPに異論はないが、彼がMVPでも良かったとも思う。
NFL WAY TO PLAYを受賞してはいるけれど。
AWSの機械学習は、彼の最後のプレイに最も反応している。

残り時間何秒などという生やさしいものじゃない。
コンマ数秒が勝負の分かれ目となったこのゲームは、A Game of Comma Secondsと呼ぶべきものだ。

気づけば、LAという街にロンバルディトロフィーがもたらされたのは38年ぶりということになる…
ザ・ロックの、うやうやしい前口上は、決してやりすぎなんかではなかったのだ。


 

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