昨シーズンのカンザスシティ・チーフスとサンフランシスコ・フォーティーナイナーズのスーパーボウルは、人生をかけたゲームと呼ぶべき、死闘だった。
その死闘を演出したのは、間違いなく両チームのDC。
その勝負を分けたプレイが詳細に解説されている。
まさに、3rd down for lifeの、あのプレイだ。
Biggest snap of the game, and Spags dialed up a beauty 🎨@InsideTheNFL: Super Bowl Mic'd Up starts NOW on @TheCW pic.twitter.com/gHgTRqa7XK
— NFL Films (@NFLFilms) February 14, 2024
3rd down for life
📽️ How Steve Spagnuolo broke Brock Purdy@DariusJButler goes beyond the broadcast, using NFL Pro Film Room and @NextGenStats to break down how the Chiefs exposed the 49ers' fatal flaw.
— Next Gen Stats (@NextGenStats) September 4, 2024
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レギュレーション 4Qの49ersの最後のドライブだ。
3rd & 4。
残り時間はまるまる2分。
49ersは、ドライブを継続してTDを奪いたい。
悪くても、FGで勝ち越したい。
そうして、反撃時間を与えぬよう時間を食い潰すことは絶対条件だ。
対するチーフスはTDは奪わせたくない。
FGで手を打ちたい。
いや、もしかすると時間を確保することこそ最優先事項だったのかもしれない。
ここで、スティーブ・スパグニョーロは7人のDBをフィールドに送り込む。
それはカバーのみを優先させるのか?
No,No,そうじゃない。
彼は、そのうち2枚のDBをブリッツさせる。
On 3rd & 5 with two minutes left in regulation, the Chiefs defense came out with 7 defensive backs on the field.
— Next Gen Stats (@NextGenStats) February 12, 2024
Trent McDuffie generated his 16th unblocked pressure of the season (including playoffs), five more than any other defensive back.#SuperBowlLVIII | #ChiefsKingdom pic.twitter.com/dwwNJYG57O
スロットCB トレント・マクダフィー
そのひとりに、トレント・マクダフィーがいた。
スロットCBという専門職で、今シーズンのAP通信によるオールプロのファーストチームに選出されている。
スロットCBというポジションは、現在の守備で最も負担の多いポジションなんじゃないだろうか。
ちょこまか動き回るスロットレシーバーのカバーを任され、サイズだけ優っていたはずが、その運動能力でもお化けになってきたTEとも対峙しなければならない。
そうしてオマケに過ぎなかったブリッツの能力は、今では必須となっている。
足の速いDBがブリッツするのは理にかなっているとはいえ…
彼は見事にやってのけた。
誰にも触られることなく最速で49ersのQB ブロック・パーディに到達すると、サックこそ叶わなかったが、わずかにチップした。
レシーバーはキャッチできるスペースを確保していた、ブロック・パーディも、それを確認しパスを投じた。
4ヤードだけ確保できれば、またドライブが継続できるはずだった。
あまり背が高いとはいえないブロック・パーディに対して、トレント・マクダフィーが、きちんとハンズアップして襲いかかったことが、わずかなチップに繋がったのだ。
Beautiful Lane
見事ミッションを果たしたトレント・マクダフィーは当然称賛されるべきだが、彼の花道を作り上げたフロントの存在を忘れてはいけない。
彼らは、トレント・マクダフィーの花道になるビューティフルレーンを作り上げている。
そしてプレイ開始前に、ココを空ける!とサインを出している。
プレイ開始前のコミュニケーションという点では、バックフィールドからRB クリスチャン・マカフリーがスロットバックにシフトした際、チーフスのDBたちが、誰を見るのかって声を出し合っている。
2 high safetyの困惑
スナップ前、チーフス守備は、2 high safetyで構えている。
そのことが、ブロック・パーディに少しだけ考え込ませる。
Single high safetyよりもカバーのバリーションが多様化する。
そして、トレント・マクダフィーは、あからさまなブリッツの匂いを封じ込んでいる。
だが、スティーブ・スパグニョーロには、2 high safetyからの豊富なブリッツパッケージがある。
Greatest NFL defensive coordinator of all time? Chiefs’ Steve Spagnuolo presents compelling case
細かなディテールの積み重ねは、OTでの3点差という結果につながった。
点差はわずかだが、勝者と敗者という明確なコントラストを生んだのだ。
22回のブリッツ
Mr. Irrelevantはブリッツに対して高パフォーマンスを上げることで知られていた。
そんな Mr. Irrelevantにスティーブ・スパグニョーロは、いつもよりブリッツレートを上げて対峙した。
ディテールを積み重ね、ソフィストケートされたブリッツパッケージは、彼から25%も成功率を奪った。
GOAT of DC?
Greatest NFL defensive coordinator of all time? Chiefs’ Steve Spagnuolo presents compelling case
スティーブ・スパグニョーロは史上最高のディフェンスコーディネーターなのか?
という記事がスーパーボウル前に出ていた。
少なくとも彼は、現時点では最高であることを、このスーパーボウルの勝利で証明してみせたのだ。
そうしてもし、史上初のスーパーボウル3連覇を達成したとき、彼の評価はどのようなものになるだろうか。
僕が彼の名前を忘れられないのは、スーパーボウル史上最高のアップセットの生みの親だからだ。
2007 – Giants vs. Patriots SUPER BOWL XLII – “THE HELMET CATCH” “It’s basically a David and Goliath situation.” – Tiya Sircar
NFL100年の歴史でベストゲーム第5位に選出された、あのゲームの衝撃は忘れることができない。
それまで爆発的な攻撃力で、無敗でスーパーボウルにやってきたペイトリオッツをわずか14点に封じ込めたのが、当時、ジャイアンツのDCだったスティーブ・スパグニョーロだ。
このとき以来、彼の名前は忘れることができなくなった。
余談だが、同じくジャイアンツのDCだったビル・ベリチックは、彼のあるゲームプランだけが、先に殿堂入りしている。
そう、あのWIDE RIGHT!でお馴染みのゲームだ。
1990 – Bills vs. Giants SUPER BOWL XXV – “WIDE RIGHT” “It gives me chills when I think about it.” – Christopher McDonald
あの爆発的なビルズのK-ガンを19点に抑え込んだゲームプランが、殿堂入りしているのだ。
“We played a 2-4-5, or a 2-3-6,” coach Bill Parcells said.
いずれ御本人も殿堂入りするだろう。
そして、スティーブ・スパグニョーロも、当然あとに続くだろう。
そのとき、「史上初のスーパーボウル3連覇を達成した」なんて肩書きがついていることを願ってる。