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NFL 2025 インディアナポリス・コルツ「愛情の血統」

そのニックネームがつけられたのは、競馬の盛んな土地で、馬の繁殖地として名を馳せていたからだ。
しかし、その土地、ボルチモアを離れてからも、優秀なCOLTは育ち続けている。

まさかの6勝1敗

第7週終了時点で、インディアナポリス・コルツは6勝1敗。
まさかの、NFL唯一の1敗を守っているチームになっている。

その好調の理由は、リーグトップのオフェンス。

ダニエル・”インディアナ”・ジョーンズ

その攻撃を引っ張るのは、QB ダニエル・ジョーンズ。
インディアナポリスに来て以来、目覚ましい活躍を続ける彼は、今では敬意を込めて、こう呼ばれている。
ダニエル・”インディアナ”・ジョーンズと。

2019年のドラフトで全体6位の指名を受けながら、ニューヨークでは花開かず、流れ着いた彼の加入は、大したトピックスではなかった。
このまま、バックアップを努めてキャリアを終えていくのだろうと思っていた。
ところが、あのペイトン・マニング Eraを超えるパフォーマンスを見せている。

だが、彼の能力を知っていたものがいる。
同じビッグブルーで、共に苦杯を舐め続けていたセイクワン・バークリーだ。

ミネソタからもリリースされ、1年契約で、ようやく辿り着いたインディアナポリス。
しかし、そこには、リーグトップのOLたちがラインアップしていた。

OL陣は、失意のQBを再生させるだけではなく、しばしばNext Gen Statsでシーズン最速値を記録するRB ジョナサン・テイラーをリーディングラッシャーに担ぎ上げている。

さらに、今年のタイトエンドの日が楽しみな、期待のルーキー TE タイラー・ウォーレンもいる。

カーリー・アーセイ=ゴードン

だが、彼らより、最初に僕の目をひいたのは、サイドラインに佇む彼女の姿だった。

ゲーム中、ヘッドセットをつけて全てのプレイコールをチェックして、必要ならばメモを取る。
それは決してマイクロマネジメントのためじゃない。
飲んでる席からダグアウトに電話をかけて、ほら、俺が電話をすれば、今すぐピッチャーが替わるんだぜという悪趣味な自己顕示欲を満たすようなものとは、全く別のものだ。
事実、彼女は、こんなにサイドラインに溶け込んでいる。

彼女は、父の死を受けて、今年、正式にオーナーとなった。
だが、別に今年になって始めたわけじゃない。
これまでも、何年も、彼女はヘッドセットをつけていた。
そして練習のフィールドにも当たり前に足を運ぶ。
ただ、今年になって、その姿をカメラに抜かれるようになっただけのこと。

ジム・アーセイ

今年、インディアナポリス・コルツのオーナーは代替わりをすることになった。
彼女の父、ジム・アーセイがなくなったからだ。

チームを買収した父、ロバート・アーセイの息子である彼は2代目だ。
買収前のボルチモア・コルツは、NFL100年の歴史でベストゲームと言われる1958年のチャンピオンシップも制した。

1958 – Colts vs. Giants
NFL CHAMPIONSHIP – “THE GREATEST GAME EVER PLAYED”

“It transformed the NFL into a national passion.” – George R.R. Martin

NFL 100 | NFL.com

その後、スーパーボウルも制したが、ロバート・アーセイ Eraでは、すっかり栄光から遠ざかることになる。
僕の記憶に残っているのは、夜逃げ同然ではなく、本当にボルチモアから夜逃げした衝撃のニュースだけだ。

しかし、その後、ジム・アーセイは、ペイトン・マニング Eraを作り上げ、トニー・ダンジーにアフリカ系アメリカ人として初のスーパーボウル勝利HCの称号を授けることになる。

Head Coach
TONY DUNGY

“His style of coaching was something that a lot of people look up to.” – Dwight Freeney

NFL 100 | NFL.com

彼のことを語る人々は、その人柄についてばかりだ。
決して、何を成し遂げたかではない。

アルコール依存の家系に悩み、自らも薬物に依存するようになってしまった彼は、苦境に陥る人に手を差し伸べていた。
HC就任早々、白血病だと診断されてしまったチャック・パガーノのことも思い出される…

3代目の家族経営

こうして経営権は、カーリー・アーセイ=ゴードンを筆頭とする、3代目の3人娘に引き継がれることになった。
すっかり上昇したチームの価値は、59億ドル!
それを3分の1ずつ所有することになる。
売却して現金化することなんて、まるで考えてもいない。

「私たちはヘッジファンドなんかじゃないの。チーム経営が私たちの仕事なのよ。」

こう言い放つCOLTのおかげで、貴重な家族経営によるフランチャイズの血統は絶たれることはない。

女性の血統

NFLでは、女性オーナーは珍しいことではない。
あの、スーパーボウルの母、ノーマ・ハントを筆頭に…

A Lifetime of Sundays: NFL History through the eyes of Four Female Team Owners

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そしてHCダン・キャンベルと涙を流しながら、勝利を噛み締める彼女の姿…

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Love of the gameと呼ぶべきものなのか…
男だ、女だの区分けで論じるのはディベートゲームみたいなものだと思ってる。
それでも、女性には、特有の愛情の深さを感じざるを得ない。
そして紳士の皆様におかれましては、女性特有の芯の強さも身に染みていることだろう。
そうした血統をアーセイ家の娘たちも受け継いでいるはずだ。
日本のプロスポーツで唯一の女性オーナーである南場智子も、きっとそうだろう。

我らがダニエル・”インディアナ”・ジョーンズは聖杯ならぬ#VLTをアーセイ家にもたらすことができるだろうか。
スーパーボウルが行われる2月は、明けて午年になっていることを、彼女たちは知っているだろうか…

【p】NFL Game Pass International