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「シン・仮面ライダー」観た人のためのレビュー(4)「お嬢さんの赤いマフラー」

『シン・仮面ライダー』終映告知映像が公開されている。
そう、本日6月4日をもって、この作品は終映となる。
終映告知映像なるものが制作されること自体が極めて稀だし、そこに映し出されているものは告知なんかではない。
率直にタイトルをつけるならば、それはオーグメントたちの遺言集だ。
それも、今際の際に発せられたもの…
観た人にとっては最短で映画を振り返ることができる映像は、この映画のコアと呼べるもの。
そして、この映画を特別なものにしているのが、仮面ライダー以外の要素だと教えてくれるはずだ。

『シン・仮面ライダー』終映告知映像

お嬢さんの赤いマフラー

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「私と一緒にいるのなら少しはマシな格好をして」
状況が掴めぬ本郷に一方的に言い放つと赤いマフラーを巻きつける。
強引な展開だなあと思っていたが、改めてみるとお嬢さんの言うとおりだ。
そこに赤いマフラーがあるかないかで、バッタオーグの見栄えがまるで違うのだ。

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剥き出しになった脆弱な首元がカバーされていることで、全体のバランスも印象も全く変わってくる。
緑川ルリ子は、SHOCKER脱走計画立案にあたって、バッタオーグの機能を損なわずに外見をまともにしてくれるミニマムなアイテムを準備していたということだ。
流石に用意周到なお嬢さんだ。

だが、その色には論理的な理由はない。
「ヒーローといえば赤なんでしょ」
それは、父親からの刷り込みによるものだ。

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組織の人工子宮で生体電算機として生まれた緑川ルリ子は、父親である緑川博士によって、初めて外の世界に連れ出されたのだろう。
そのとき、お父さんは、お嬢さんにとって最初のヒーローだったに違いない。
そうして彼女は、そのヒーローにきっと尋ねたはずだ。
「どうして赤いマフラーをしているの?」と。
「ヒーローといえば赤いマフラーに決まってる」
緑川博士は、そう答えたはずだ。
そんなやりとりを思い出して、あの切迫した場面でも、彼は微笑んでしまったのだ。
生体電算機が父親からインストールしたのは、「ところがぎっちょん!」なんて昭和の慣用句だけではないのだ。

「マフラー似合っててよかった…」
そう言い残した彼女は、それを本当に喜んでいるようだった。

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父親への強い愛情を持ちながら、遺伝子情報しか繋がっていない生体電算機の自分が本当の娘と呼べるのかというアイデンティティの強い揺らぎを彼女は経験したことだろう。
だから自分が写っていない家族写真は、コンプレックスの象徴でしかない。
そこには、自分が感じたことのない母親という存在も映り込んでいる。
しかし、緑川博士にとって彼女は、まごうことなき娘だった。
彼は本郷に、あの生体電算機を守れとは言わなかった。
ルリ子を頼むと言ったのだ…

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赤いマフラーのアイデンティティ

パリハライズで洗脳を解いた一文字にも、彼女はすかさず赤いマフラーを巻きつける。
用意周到なお嬢さんは、常に予備のマフラーを持ち歩いていたと見える。
それは本来、新しい仲間のためではなく、あくまで激しい戦闘に身を投じる本郷のためのものだ。
戦闘の最中、そのスカーフはすぐに傷んでしまうだろう。
そうなったとき、すぐに予備を渡せるように周到な準備をしておくのだ。
なぜなら、今や、赤いマフラーは重要なアイデンティティを兼ね備えているからだ。
緑川ルリ子にとってのヒーローが出現したからということにとどまらない。
それを身につけたものは、バッタオーグと名付けられたものではなく、仮面ライダーと名乗りをあげる存在なのだ。
そう、魂の自由を取り戻した者の証なのだから…

 

 

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