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現在のバレーボールは排球ではなくハイキュー!!だった

大変遅ればせながら、いい歳の男である僕がハイキュー!!にハマっている。
その魅力は、大きくふたつ。
ひとつは、孤爪研磨いうところの最終奥義としての根性を未だ発動できない者が、自らを、あるいは他者を言動によって突き動かしていく様子が細やかに繊細に描かれていること。
そして、もうひとつは、バレーボールそのものの面白さを教えてくれること。
だがしかし、それはきっと漫画のお話にすぎないだろう。
そう思って実際のバレーボールを観て、僕はぶっ飛んだ。
実際のバレーボールは、漫画を超えて、よりスピーディーでスリリングだった。

強いって 自由だ

作品の中では、マイナステンポが圧倒的な速さをもつものとして描かれる。
やはりマイナステンポは現実には難しいようだが、そんなものなくっても、ファーストテンポでも、いやセカンドテンポでさえ十分に速い。
それを観た上でマイナステンポを妄想すると、烏野10番の、「もう、いる」という尋常ならざる速さに高まる。

ファーストテンポがセッターのセットアップよりも前に助走を開始しているのに対し、マイナステンポはそれよりも早い段階で助走を開始し、セッターがセットアップする時には踏み切っているプレーです。相手のブロッカーはセッターのトスを見てからジャンプして手を出してくるため、相手のブロッカーが手を出してくよりも早くアタックを繰り出すことができます。セッターのセットアップを基準として、それよりも早く助走〜踏切まで完了しているためマイナステンポと呼ばれます。

2019.12.19 | NEWS | バレーボール Vリーグ オフィシャルサイト

フェイクセットや、フェイクセットで自分で自分を囮にする攻撃。
こんなプレイが実際に行われているのだ。
「強いって 自由だ」
のびやかで自由なプレイが創造されていく様子には、僕もおんなじセリフを呟いてしまう。

これだけ攻撃が強力になっていながら、昔見たことのあるバレーボールに比べてレシーブできていることにも感心する。
烏野が1年メガネを起点にして実践していたトータルディフェンスのようなものが発達しているのだろうか。
攻撃が進化すれば守備も上回るように進化する。
そして、また新しい攻撃が生まれる。
どんなスポーツにおいても、その凌ぎ合いが進化の道筋を開いていくのだろう。
そうして、現在の進化に至るまでの道筋で、ルール変更は大きな役割を果たしているはずだ。

ルール変更の歴史

僕が以前観た試合は、もっとがんじがらめに縛られていた記憶がある。
まずは、サーブ権を持っていなければ得点を得られない。
そのサーブにしたってネットに触れれば失敗となって、サーブ権は移行してしまう。
サーブで崩すことよりも、まずは確実に入れることが優先されていたように感じる。
バックアタックも珍しい時代では、コンビネーションの選択肢も限られていた。

では、バレーボールは、どのようにルール変更の歴史を歩んできたのか。
それを見ていくと、なかなか興味深い。

1895年、激しいバスケットボールと違って、老若男女が楽しめるスポーツとしてバレーボールは誕生する。
昭和中期の会社の屋上でサラリーマンと制服を着た事務員が円陣で楽しむレクリェーションのあの光景。
そんな雰囲気のものだったのだろう。
1912年に、3回以内で相手コートに返すという制限がついたことで、レクリェーションは競技スポーツへとシフトチェンジする。

以降は、ブロック時のオーバーネットの許容、ワンタッチをカウントしないというレクリェーションの頃には存在しなかったブロックを進化させるためのルール変更が続く。
サーブもエンドラインのどこからでも打てるようになり、ネットインも認められるようになった。
必然的に強力になっていくサーブのレシーブのために、ドリブルが緩和されていく。
ラリーポイント制はゲームをスピードアップし、リベロという専門職を拵えることで、巨人以外も置いてきぼりにしなかった。

NFLも100年の歴史の中で、パッシングモアへと進化してきた。
そうしてアメリカンフットボールの華であるフォワードパスが煌びやかになり、現在の隆盛を迎えている。

もしもルールが進化していなかったら、NFLに現在の隆盛がもたらされたはずがない。現在のNFLのルールは、意図と偶発的な要素のマリアージュによって醸成されてきたものだ。

NFL百年の走馬燈(6)ルールの進化「100年の歴史」 | ALOG

バレーボールも、そのルールの変更により、自らをよりバレーボールたらしめようとしている。
ボールの保持が一切許されていないバレーボールでは、高速のボールのやり取りの中に、瞬時の思考の裏打ちがあるのだろう。
そうして緩やかになったルールの中で、選手たちが創造性を発揮していく。
スポーツとしては、正しい進化の道程にあるはずだ。
この先、バレーボールは、どんなルール変更を行うことになるのだろう。
そしてそれは、選手たちにどんな創造性をもたらすだろうか…

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