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「007 スペクター」見た人のためのレビュー(4)「ブロフェルド 刻みつけた憎悪」

ブロフェルドは、しっかりとその姿を現した。
正式に登場するというアナウンスはなかったが、SPECTREという組織の出現の必然として彼は登場する。
そして、今回のブロフェルドは、これまでのパロディめいた冗長さを一切排除した理知的なキャラクターである。

情報源: Focus Of The Week: Blofeld (Christoph Waltz) | James Bond 007

生い立ち

今回のブロフェルドは、その生い立ちも語られる。
そう、ボンドと兄弟同然に育ったという因縁とともに。

本名はフランツ・オーベルハウザーといい、彼の父ハンスは両親を亡くした幼少期のボンドの後見人であり、ブロフェルトとボンドは血はつながってはいないが実質的な兄弟の関係にあった。父ハンスがボンドに愛情を注ぐことに嫉妬し、雪崩を起こして殺害。自らも死を偽装して行方を眩ます。以後、母方の血統より名前を拝借しエルンスト・スタヴロ・ブロフェルドという偽名で組織スペクターを立ち上げた。

情報源: エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド – Wikipedia

だからといってボンド自身に激しい憎悪を抱いているかといえば、そうは思えない。
もしそうであったなら、雪崩の事故でボンド自身を殺害したはずであろうし、スペクターのような組織を率いる中、それはいくつでもそのチャンスはあっただろう。

だから、彼は人間の根本の信頼関係である親子の愛情に不審を感じ、そうしたものに基づく社会との関わりを拒否したのだ。
そうして、自分の目と耳で価値判断するための組織を作り上げ、そのように世界を動かしてきた。
ほら、お前らが信じているものは、こんなにも脆いものなんだと突きつけるように。

彼がMI6やダブルオーセクションを目の敵にしたのは、計画の遂行のために邪魔だったからだ。
しかしその中で、ボンドがダブルオーエージェントに昇進したことを喜んだのかもしれない。
ターゲットとするMI6にボンドがいるのなら、無味乾燥な計画にエンターテイメント性を持たせられるかもしれないと。
そうして、ヴェスパー・リンドやラウル・シルヴァのようなキャスティングに凝ったのだろう。

プラクティカルにボンドに拷問を行うブロフェルドは、ベテランの歯科医のような振る舞いだ。
そしてトレードマークのペルシャ猫は、のんきに拷問中のボンドの膝の上にお座りしている。

http://helenspreference.tumblr.com/post/140771557861/spectre-2015-dir-sam-mendes

刻みつける憎悪

今回、ブロフェルドは新たな強い憎悪を抱くようになる。
計画を目前でフイにされたこともある、重要なアジトを失ったこともある。
しかし、最も許せないのは、自らを射殺しなかったことだ。
そしてボンドは、そんな暗闇のような世界とは手を切って、陽の当たる道を歩いていくというのだ。愛で繋がれた伴侶とともに。
そんなことは、とうてい受け入れられない。
またお前だけ、愛されるということは。
だから彼は、その対象を目に焼き付ける。
できたばかりの傷口は、そうしたものを刻みつけるのにおあつらえ向きなのだ…

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