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2023 Army-Navy Game 「米軍発祥の地のA Game of Inches」

124回目の陸軍士官学校 vs 海軍兵学校の一戦は、フォックスボロで行われた。
いや、帰ってきたというべきなのかもしれない。
なにしろ、マサチューセッツは、陸海軍発祥の地なのだから。
そしてゲームは、指一本、インチが勝敗を分ける激闘となった。

The history behind the Boston Battles: Army vs. Navy 

1775年、英国の支配に対抗するためマサチューセッツの人々が武器をとり立ち上がった。
そうして陸軍、海軍、海兵隊の3軍が編成されたのだ。
フォックスボロで、愛国者のニックネームを持つチームのホームスタジアムで、Army-Navy Game が行われるのは、至極当たり前のことなのかもしれない。

ペイトリオッツのゲストたち

そうしてゲームには、ペイトリオッツの関係者がゲストで登場していた。
NFL100年のベストメンバーにTEとして名前を連ねるロブ・グロンコウスキー。

あのビル・ベリチックに、コーチにとって夢のような選手と評される男は、分け隔てなく両軍を激励していた。

ところが、当のビル・ベリチックは、どうだ?
ジョリー・ロジャーを掲げ、ご丁寧に「陸軍に勝て」と漢字で書かれたNavyのヘルメットを被り、Go Navy! Beat Army!と叫んでいるじゃあないか。

同じく、NFL100年のベストメンバーにコーチとして名前を連ねる公人が、そんなに肩入れしていいの?
なんて思ったが、彼の生い立ちを思えば、それは当然のことなのだ。
彼の父親、スティーブ・ベリチックはNavyのアシスタントコーチだった。
幼少の頃から、父に連れられチームのファシリティに出入りしていたことが、彼がコーチを志す根っこになっているのだ。


お父さんの同僚だったリー・コルソと思い出を振り返るシーンも、長い伝統を誇るゲームのひとつの側面だ。

自前のフライオーバー

出場するチームが、持ち込みのフライオーバーを行うなんて、このゲームしかない。
だから、このゲームでは、陸軍と海軍の2種類のフライオーバーが味わえる。

第3歩兵師団 vs 沈黙の艦隊

情報源: 2023 Army-Navy Game 第3歩兵師団 vs 沈黙の艦隊 | ALOG

この日だけ着用されるスペシャルなユニフォームは、第3歩兵師団 vs 沈黙の艦隊。
Armyはイラクで活躍した第3歩兵師団 をモチーフにした、全身「タン」カラー。
Navyは、潜水艦乗りをモチーフにしたエクリプス・ネイビー。
らしいカラーマッチになっている。

総力戦の肉弾戦

それぞれの攻撃の3分の1が、QBによるランプレイ。
決してオプションが多かったわけではない。
デザインされたQBのランプレイなのだ。

カタチはスプレッドだが、それはフロントを厚くさせないためのもの。
QBがボールを持つということは、残り10人を全てブロッカーとして使うことができる。
つまり、ワイルドキャットをQB自身が延々と繰り返していることになる。
そのへんのチームみたいに、QBのヒットのリスクを考慮してなんてプランじゃない。
真っ向勝負の、総力戦の肉弾戦なのだ。

指先に宿る意地

印象深かったのは、選手たちの指先にまでみなぎった意地だ。
タイトな展開に、やっとこさオープンになって抜け出そうとするランナーがいれば、誰かが最後に絡んだ。
ときには、シューストリングタックルよりも微細な、指一本をスパイクの爪先になんとか絡めて止める場面もあった。
そんなのスキルじゃない。
純正の意地に他ならない。

そうして指先に宿る意地は、パスカットでもインプレッシブだった。

時折、決定的となりそうな長いパスが放たれた。
レシーバーもフリーになり、ようやくビッグプレイが生まれそうになると、誰かの指先が、それを許さなかった。
抜かれても、最後まで、その指先はあきらめていなかった。
こうしたプレイは、両チームとも幾たびか披露した。
延々と続くランプレイの中、その時に備えて集中力を切らさなかったDB諸君には大きなクレジットを与えよう。

カリブ・フォートナー

そんなプレイを最もわかりやすく体現してくれたのが、Army側のPLAYERS OF THE GAMEであるカリブ・フォートナーなのかもしれない。

彼はラッシュをかわされると、指先のストリップサックでTDに結びつけた。

そして印象的だったのがもうひとつのプレイ。
最後の最後、エンドゾーンまでにじりよるNavy。
フラットゾーンのカバーが薄い。
ここにRBを送り込めば行けるんじゃないかと思った矢先、Navyは、それを実行した。
行ってしまう!と誰もが思ったその時、エンドゾーン直前で止めたのは、パシュートしてきた彼だった。

 The Brotherly Shove

エンドゾーン目前の4th down。
Navyが選択したプレイは、 The Brotherly Shove。
今、フットボールで最も旬なプレイであり、肉弾戦上等の彼らには、最適な選択だと思える。
おそらく、この日のために両チームともが用意をし、両チームともが、それに備えていたはずだ。
Navyは1.5ヤードを押し込んだが、Armyは、0.5ヤードを死守した。

A Game of Inches

「どうしていつも、こうなるんだ?」昨年の対戦でチームが2度の延長戦で勝利したArmyコーチのジェフ・モンケン氏はこう尋ねた。「そうだ。いつもそうだ。我々には14点のリードがあったが、残り1秒で彼らはそこに立って同点のチャンスを狙ってドアをノックしている。非現実的だ。」

情報源: Army hangs on, wins 124th meeting with Navy – ESPN

Armyのヘッドコーチの述懐が、このゲームの本質を物語っているような気がする。
Armyが先制し、2ポゼッションのリードを奪うとゲームは決まったかのように見えた。
恐ろしく時計が早く回るこのゲームでは、Armyが時間を消費してしまえば終わるはずだった。
攻撃の糸口すらつかめなかったNavyは4Qまで無得点。
まともなドライブさえできていなかったのだ。
ところが短いパスを確実に通すと、決してランアフターキャッチは許されなかったが、ドライブを続ける。
気づけば、ラストプレイまで勝負がわからなくなっている。

グレートライバリーの伝統の一戦とは、かくあるべしなのだろう。
戦術や能力を超えた意地が、カタチになって現れたとしか言いようがない。
勝負を諦めないNavyが、最近ではほとんどお目にかかることのない、11人全員でパントブロックを仕掛ける姿が印象深い…

こうしてSING SECONDは、2番目に校歌を歌う権利は、2年連続でArmyのものとなった。

通算成績は、これで62勝55敗7分と、Navyのリードは埋められつつある…


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