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NFL百年の走馬燈(5)100年のベストメンバー「TE編 永遠のプロトタイプ」

NFL100年の長い歴史の中から、ベストメンバーを決めよう!
という興味深いアイディアで発表されたOFFICIAL ALL-TIME TEAM ROSTER。
そこから取り上げるのは、これまたもっとも興味深いポジションTE(タイトエンド)だ。

選出された5人のTE

候補に上がっていたのは12名のピッカピカのビッグネームばかり。

そこから5人が選出されたのだ。

ベリチックの選考基準

ベリチックが投票した基準は明確だが、相当ハードなもの。

「全てのプレイでダブルカバーを用いてもカバーしきれない存在」

そして、動画では実際にトニー・ゴンザレスと対戦したペイトリオッツがハードなダブルカバーでなんとか封じ込めようとする姿が映し出されている。

トニー・ゴンザレス

ダブルカバーという生やさしいものではなく、LBふたりがかりでリリースさえも許さないという手段をベリチックにとらせてしまうほどの存在。
TD数、キャッチ数、ヤード数の全ての数字でTEの王座に君臨し、17年の現役生活で14回もプロボウルに選出された彼だけど、最初の2年はパスを落球しまくってドン底だった。
1巡指名から期待外れのバストに成り下がってしまいそうだった彼を救ったのは、ケレン・ウィンスローだった。
コーチ経由で彼のテープを入手したトニー・ゴンザレスは、ルートの取り方、パスの捕球方法を経典のように学び、大選手となったのだ。
彼は、師匠から時空を超えた通信教育でバトンを受け継いだのだ。

ケレン・ウィンスロー

現在のTEの始祖鳥のような存在。
TEとして初めてWRのようなルートを走り、ポジションもOLの隣という固定位置から解放された。
H-Bとしてモーションし、ワイドアウトにもセットした。
現在、パスキャッチで暴れまくるTEの全ての直接の祖先であり、彼らのベンチマークである存在。

ジャイアンツのコーチになりたてだったベリチックは、ハーフタイム時点で41点も稼ぎ出す活躍ぶりに本当にうんざりしたらしい。

ジョン・マッケイ

November 20, 1966J
OHN MACKEY RUNS OVER LIONS D FOR 64 YARD TD
“I feel there are no great men, only great challenges.” – John Mackey

情報源: NFL 100 | NFL.com

NFL100年の偉大なプレイ100のひとつに挙げられたこのプレイ。
初めてこのプレイを見た時の衝撃は忘れられない。
なんてことのないフラットのパスが、あっという間に64ヤードのTDに。
群れをなして襲いかかる7人のタックラーは、文字通り何もできなかった。
同じプロフットボールの選手なのに、そのフィジカルの差は圧倒的だ。

彼が大学時代を過ごしたシラキュース大学には、エースナンバーがあり、あのジム・ブラウンも背番号44だった。
しかし、ジョン・マッケイは代々のエースたちよりも2倍すごい!という理由で背番号が88になったらしい。
ロブ・グロンコウスキーも似たタイプですねと聞かれたベリチックは、「いや、もっとアスレチックだ。悪夢のような存在だ」と答えている。

マイク・ディトカ

現在のTEの本家本元と言えるだろう。
TEがまともにレシーバーとして使われるようになった最初の選手。
そこにジョン・マッケイが続いて、最初のTEのプロトタイプが出来上がった。
そんな彼のプレイも、NFL100年の偉大なプレイ100のひとつに挙げられている。

November 24, 1963
MIKE DITKA’S AMAZING CATCH AND RUN
“I was lucky, some people missed tackles.” – Mike Ditka

情報源: NFL 100 | NFL.com

マイク・ディトカとジョン・マッケイ。
この二人は、アスレチックだ、アスリートだという前に、ただただ危険な香りしかしない。
TEというポジションを、それまでと全く違う方法で活用するのなら、とうてい規格に収まりようがない選手を起用する必要があったということになるのだろうか。

そんな彼はNFL100年の偉大なゲームチェンジャーの一人として挙げられている。

Tight End – Head Coach
MIKE DITKA
“The tight end position is so much more recognized today then it was back then.” – Mike Ditka

情報源: NFL 100 | NFL.com

また、その強いキャラクターもしっかりとランキング入りしている。

Tight End – Head Coach
MIKE DITKA
“He’s one of the greatest Halloween costumes.” – Pete Wentz

情報源: NFL 100 | NFL.com

現役時代を知らなかった僕は、ただただ恐ろしいヘッドコーチだという認識しかなかった。
しかし、彼がいなければ、現在のTEの発展はなかった。
ずいぶん前に危機を乗り越えられずに絶滅していたはずだ。
そういう意味では、次のNational Tight End Dayでは銅像くらい建立しておかないとバチが当たりそうだ。

ロブ・グロンコウスキー

どうしても手に入れたかったベリチックがドラフトの指名権をトレードしてまで指名順位をあげた存在。
その期待通りの活躍で、オフェンスの柱になった。
苦しい状況を打破するときに頼りになる男。
それをわかっているウェイド・フィリップスはトリプルカバーまで持ち出していた。
2019シーズン、ペイトリオッツがここ一番を乗り越えられなかった理由は、彼が不在だったことに尽きるんじゃないだろうか。

ここ数年ウワサになっていたことが現実となった。ペイトリオッツのTEロブ・グロンコウスキーが引退を表明。愛国者のダイナスティを支えた功労者に、NFLは、すぐさまキャリアハイライトフィルムを公開した。

情報源: 引退表明のペイトリオッツTEグロンコウスキーのキャリアハイライトをNFLが公開 | ALOG

そんな頼りになる男は、私生活ではただのガキ。
ベリチックの第一印象は、相当悪かったらしい。
入団前に部屋で待たせていたら、床で眠ってたというのだから。
レッドソックスの始球式で、ロンバルディ・トロフィーをバットがわりに遊んで、へこましてしまったという有名な事件にも、驚くことじゃないよとベリチックは苦笑いだ。

永遠のプロトタイプ

どの時代のTEを見ても共通する誉め言葉がある。
それは「プロトタイプ」だ。
時代の変化に合わせて大きく役割が変化してきたのが、このポジションだ。
いや、今となってはTEの変化が、時代を変えてきたと言ってもいいだろう。
その時代のプロトタイプが出現し、その発展型が新しい流れを生む。
単なるブロック要員が、短いパスをとるようになり、長いルートを走るようになり、今や、フィールドのどこにセットしてもいい自由を得ている。
まるで生き物の進化の過程を見ているようだ。
そして、NFL100年の歴史の中で、もっとも急激に進化したのがTEというポジションだ。
ひと頃の絶滅の危機を乗り越えた現在では、一段と成長度合いが激しくなっている。

NFL100周年の第54回スーパーボウルが、プロボウラーTE対決のNational Tight End BOWLとなったのは偶然ではないのかもしれない。
モダンに進化したものだけが、適者生存のこの厳しいセカイを生き抜いていけるのだから…

今回は、オールプロに選出されたプロボウラーTE同士の対決なのだ。 2019年は、「タイトエンドの日」が公式に制定された記念すべきシーズン。

情報源: 2020 第54回スーパーボウル「プロボウラーTE対決のNational Tight End BOWL」 | ALOG

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