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NFL Films 2022 ベストショットとささやかな喪失感

毎年この時期のお楽しみ、今シーズンのベストショット。
NFL 2022 シーズンのThe Shots of the YearをNFL Filmsが公開。
6分間に及ぶ映像の叙事詩は、ささやかな喪失感を抱えた僕に染み入ってくる。
そうして、僕も、いくつかのシーンを振り返ってみよう。

The Shots of the Year

成績もゲームも、プレイすらも関係なく、捉えられたいくつかのシーン。
雨粒さえも主要キャストに感じさせてしまうほどの彼らの映像は、スタジアムに隠れている美しさと静寂を見つけ出してくれる。

また彼らは、ベストゲームの映像も公開している。

ピックアップされたゲームは3つ。
第13週のカンザスシティ・チーフスvsシンシナティ・ベンガルズ。
第16週のフィラデルフィア・イーグルスvsダラス・カウボーイズ。
第10週のミネソタ・バイキングスvsバッファロー・ビルズ。

NFLはNFL Filmsのフィルターを通して見ることが最適に思える。
英語がわからなくて残念な気持ちもあるが、言語がダイレクトに入ってこないからこその良さもあるようにも思える。

Championship Gameの敗戦

まだシーズン最大の大一番、スーパーボウルも終わっていないというのに、ささやかな喪失感を僕は抱えている。
いや別にカンザスシティ・チーフスやフィラデルフィア・イーグルスを見たくないというわけじゃない。
ただ、Championship Gameの決着が苦くせつなかったからだ。

シンシナティ・ベンガルズとカンザスシティ・チーフスの対戦は、予想を上回る激戦。 お互いの守備がお互いの強力な攻撃を封じ込めながら、それでも攻撃が渾身のプレイで活路を開く。 素晴らしいゲームの典型的な展開となった。 だからこそ、幕切れは、せつない… ビターエンドという表現では、とてもじゃないが賄いきれない…

情報源: NFL 2022 AFC Championship Game 「アンネセサリーなせつなさ」 | ALOG

満を持して行われたサンフランシスコ・フォーティーナイナーズとフィラデルフィア・イーグルスのNFC Championship Game。 気楽な観戦者として言い切ってしまえば、近年稀に見るつまらない試合だった。 ブロック・パーディが怪我したからしょうがないじゃないって? それだけが原因というわけではないんだよね…

情報源: NFL 2022 NFC Championship Game 49ers vs Eagles 「Irrelevant Bowl」 | ALOG

Mr.Relevant

今シーズンのNFLで後半の話題をさらったのは、ブロック・パーディだった。
背番号と同じ第13週でスクランブル出場を果たすと、初スターターでGOAT トム・ブレイディを破るという初めてのことをやってのけた。
Mr.IrrelevantとしてNFLに加入したことよりも、どんな時でも冷静なプレイぶりに話題は移って行った。
負けなしでたどり着いたChampionship Gameの序盤に尺骨側副靭帯断裂の怪我を負うなんて、彼にはまさしくIrrelevantな出来事だっただろう。
スターターQBになったくらいでは浮ついたところを見せない彼が、それでも対戦後にはGOATを探す姿が印象に残る。

ジョージ・キトルはジャーカーじゃない

Championship Gameどころか試合としても成り立たなくなってしまったチームメイトを鼓舞し続けたのはジョージ・キトル。

ジョーカーを敬愛してやまないと常々口にしている彼だけど、それは彼の真実(ほんとう)ではないだろう。
ジョーカーはカオスを愛してやまない。
混沌とするサイドラインを鎮静化させようとする彼の姿は、その真逆にあるものだ。
TEUまでオーガナイズした彼は、道楽息子を装いながらジャスティス・リーグまで結成したブルース・ウェインそのものじゃないか。

コーチたち

NFLのコーチたちは、審判とよく喋る。
日本で審判にあんな軽口を叩いたら、勘違いした審判に不遜だと言われて判定が厳しくなってしまうかもしれない…
単なるチェスの打ち手ではなく、コーチなんだということが、彼らのライブな姿を見ていればよくわかる。
その中で、気にかけていたいくつかのチームのコーチはインプレッシブだった。

HC ダグ・ピーダーソン

戦績のみならず壊滅状態だったジャクソンビル・ジャガーズのヘッドコーチに就任すると、最終週のテネシー・タイタンズとの直接対決を制してプレイオフへ。
WILD CARDでも劇的なアップセットを演じた。
古巣のフィラデルフィア・イーグルスと対戦した時には、ジェイソン・ケルシーにユニフォーム交換ならぬジャケット交換をせがまれている。

ダグ・ピーダーソンの人柄を表すエピソードだと言えるだろう。
今年、スーパーボウルに出場するイーグルスには、彼のレガシーが息づいている。

HC マイク・マクダニエル

今シーズン、マイアミ・ドルフィンズの新ヘッドコーチ就任にすると、ジミー・ジョンソンしか成し遂げていない就任直後の3連勝を記録。
さらに、スタートの10週を7勝で乗り切るというデイブ・ウォンステッドしか達成していなかった記録も達成した。
両方を記録した、フランチャイズ史上初めてのヘッドコーチとなった。
イェール大学で歴史を学んでいたというアイビーリーガーは、ここに辿り着くまで、長くワイルドな道のりを歩んでいる。

ショッキングな負傷退場もあったQB トゥア・タゴヴァイロアの幾度かの欠場にもめげず、チームをプレイオフに導いた。
華やかなセーフティーブリッツを魅せながらも、もうひとつ効果的でなかったディフェンスに、来シーズンは強い味方がやってくる。
来シーズンの彼の道のりは、よりワイルドでエキサイティングなものになるのかもしれない。

HC ダン・キャンベル

2021シーズンはトリックプレイに頼るしかなかったデトロイト・ライオンズは、その攻撃を劇的に改善してみせた。

NFLのHCの中でもっともギャンブルプレイの率が高いGo For It!の大将は、肉薄しながらも勝ち星を手に入れられない状況を乗り越え、もう一歩でプレイオフに手が届くところだった。

最終週、勝てばプレイオフに進めるグリーンベイ・パッカーズに、勝ったとしてもシーズン終了となるライオンズが勝ち切ったことは大きい。
来シーズン、地区内のランキングは大きく変わるのではないだろうか。

ここまで書いたところで、GOAT トム・ブレイディ引退のニュースが飛び込んできた。
それについては、またあらためて書くことにしよう。
大きな喪失感に向き合う前に、今は、この叙事詩に逃げ込んでおきたいんだ…

 

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