衣食住

BICのライターを手にしてわかったZippoに求めるもの

ふと街中で遭遇したBICのライターを衝動買いしてしまった。
昔は、ノベルティにもよく利用され、買わずとも、いつの間にか傍にあったBICのライター。
しかし、最近では、売られている場面すら見かけなくなってしまった。
コンビニに腐るほど売ってるじゃないかって?
僕が話しているのは、あの痩せギスのスリムライター J23のことではない。
ふくよかな丸みを帯びたレギュラーライター J26の話だ。

BIC レギュラーライター J26

このふくよかなレギュラーライター J26は、コンビニで見かけることはまずない。
出会す可能性があるのは、消えつつある個人経営のたばこ屋さんだ。
そうした店の軒先に、いつからいたのかはわからないが、ポツンと佇んでいる。
そうして、気にいるカラーがあれば、ついつい手に入れてしまう。
振り返ってみれば、僕がタバコに火をつけるとき、お世話になっているのはZippoか、このふくよかなBICのライター。
いわゆるチルチルミチルの100円ライターには、ほとんど手を出さなかった。
その製品自体がどうのこうのというよりも、それを使っている人たちに、あまりいいイメージが持てなかったからだ。

チルチルミチルな奴

大学の同級生に、「たばちょ!」と言っては、いつもタバコをねだる奴がいた。
差し出し、火をつけてやろうとすると、火は持っていると言い放ち、ポケットから取り出したチルチルミチルをしゃりしゃり擦っていた。
暫くぶりに会った彼は、まだタバコなんぞを吸っているのかと僕に冷たく言い放ち、支店長になったんだと胸を張った。
社会に迷惑をかけた時しか報道されない銀行とはいえ、有数のメガバンクのひとつだ。
支店長になれるのは、10人に1人なんだぜと聞きもしないのに解説を加えてくれた。
彼が金融の、しかも銀行という世界で成功したことに、いたく納得したことを僕は覚えている。

対極のZippoとBIC

Anyway、ZippoとBICは同じライターとはいえ対極の存在である。
かたやヘビーデューティーさを謳い、オイルやフリントを継ぎ足しながらエイジングすら楽しんで長く使うもの。
もう一方は使い終わったら新しいのに取り替えてね、シンプルに火はつくよというカジュアルな身軽さ。
どちらの主張も好きだし、気分でそれぞれにお世話になっている。
特にZippoのメンテナンスがめんどくさくなってくると、シンプルなBICに逃げてしまうことが多い。
事実、それが理由でZippoからは足を洗い、BICのレギュラーライター J26を見かけるたびにまとめ買いしている知り合いもいる。
そうして僕も数日、BICを使い込んでいた。
しかし、なんだか物足りなさを感じるようになってしまった。
もちろん機能としては問題ない。
さらに、なかなか巡り会えないお気に入りのカラーを手に入れたんだから、見た目にも問題はない。
いったい何に満たされない感じを持ってしまうのだろう?
冷静に分析してみると、それは二つの要素に行き着いた。
重量感と音だ。

肉感的なZippo

手のひらに収まるサイズなのにズシリと重量感を感じることができる。
そんな存在は、日常生活の中では、金属製のライター以外にはない。
「それを感じるからどうなんだ?」
と問われれば、論理的には答えられない。
ただそれを感じたいし、それが心地いい。

そして音だ。
蓋を開け、火をつけ、そして蓋を閉じる。
その一連の動作の中で生まれるZippo特有の音。
タバコを吸うという動作には、なんの機能も加えない要素ではあるけれど、その音を耳にしたい。
それにそもそもタバコを吸うということ自体、人生になんの機能も加えない行動なのだ。

こうして、割り切ってBICを使っては、なんとなく寂しくなってZippoに舞い戻る理由が初めて冷静に分析することができた。
その理由が、全く論理的ではない、甚だ肉感的なものであったとしても…

そうすると、僕が手に入れるべきZippoも自ずと絞られてくる。
重さをより感じたいのだから、ARMOR モデルにするべきだ。
さらに手のひらの中で、ツルッとした手触りを味わいたい僕は、プレーンなハイポリッシュのモデルを選択するべきだ。
もう安直なエイジングを求めない僕には、クロームかスターリングシルバーということになる。
純銀というものにこだわりがない僕は、クロームで十分だし、僕には大量生産の普及品くらいがお似合いだ。
しかし、スターリングシルバーを選びたい。
理由は二つある。
ひとつは音だ。
ARMOR モデルでないものも、スターリングシルバーの開閉音は、よりベターだ。
より音質を求めるのなら、スターリングシルバーにしておくべきなんだろう。
そして、二つ目は、蓋のガタつき。
現在使用中のZippo ARMOR クロームポリッシュは、購入当初から、ちょっとした蓋のガタつきがあって、どんどん悪くなっているような気がする。
ただ、あからさまに壊れているわけでもないので、修理に出すのもどうかという感じなのだ。
大量生産の普及品であるクロームを再度購入した場合、またこうした製品に当たってしまう場合もあるだろう。
もう少し高級なスターリングシルバーだったら、そうした最終チェックもされているんじゃないかと思ったわけだ。
ま、こればっかりはわからないけれど…

Oh Windy!

どうやら僕は、Windyとは結ばれない運命らしい。
Zippoに求めるものが、ルックスではなく、重量感と音、そして手触りという甚だ肉感的なものだと判明した以上、それを阻害するものは排除するしかないもんねぇ…
僕に残されたWindyと結ばれる方法は、コレクターになるという選択だ。
しかし、使わないものを、ひたすら買い集めるというコトには、なかなか気が進まない。
ましてそれが、日常を共にするZippoであれば、なおのこと。
しかし、いつかのデザインのWindyに衝動買いしてしまいそうな自分であることも、よくわかっているわけで…

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